NAD+を増やす作用は比較的一貫している
NAD+関連化合物(NMNやNRなど)に関するシステマティックレビューでは、経口摂取したNMNが血液中や細胞内のNAD+関連の物質を増やすことが、比較的一貫して確認されているとまとめられています。つまり、「体内でNAD+を増やす」という薬理学的な作用そのものは、ヒトでも確認されている状況です。
一方で、健康に関するアウトカムは一貫していない
同じレビューでは、NMNやNRを摂取した後の「機能面・代謝面・血管への影響」といった健康に関する指標については、結果が研究ごとにばらつき、無効(効果なし)や、特定の評価項目でしか変化が出ないという報告が多いとされています。抗老化やウェルネスの目的での臨床的な有効性は、現時点で結論が出ていないと明記されています。
指標によっては変化を示唆する報告もある
血圧が高めの成人を対象にした10件のランダム化比較試験(参加者349人)を統合したメタ解析では、拡張期血圧にわずかな低下がみられ、60歳以上に限ると収縮期血圧にも低下がみられたと報告されています。ただし、著者ら自身が「予備的で示唆的な結果」と位置づけており、より大規模で長期の試験が必要だと述べています。
また、糖尿病がある高齢男性(65歳以上・身体的フレイル)を対象にした24週間のプラセボ対照試験では、網膜の一部の厚みに変化がみられたと報告されています。ただし、この試験の対象は各群7人と非常に小規模で、視力そのものには両群とも大きな変化は見られませんでした。
睡眠については試験計画の段階
慢性の不眠症を対象としたNMNの試験計画(プロトコル)が公表されていますが、これは試験の設計を報告したもので、有効性の結果はまだ示されていません。
意味を検討するには研究デザインが重要
臨床応用に関する総説では、NMNなどのNAD+前駆体について、最適な摂取量や摂取経路、頻度、長期の安全性、個人差の解明のために、より大規模で質の高い研究が必要だと繰り返し指摘されています。現時点では、効果を確定的に語れる段階ではありません。